2010年5月31日月曜日

角田光代「八日目の蝉」



文庫本が出たら買おうと思ってたんだけれど、
友人が貸してくれると言うので
これ幸いと借りてきて
夢中になって読みふけった。

もともと読売新聞紙上で連載されてたもので
そのときもほぼ全部読んでいたのだけれど、
再読したら忘れていた個所も多くて
新たな気持ちで読むことができた。

同時にNHKのドラマとしても放映されていて、
こちらも録画しながら観ていたので、
小説とドラマ、ほぼ平行して味わった。

結論から言うと、ドラマもそれなりに愉しめた。
#特に壇れいさんの押さえた演技が良かった
でも、小説の方が何倍も面白かったのだ。

一度新聞紙上で読んでいるので、
おおまかな話の筋は分かってるはずなのに、
次はどうなるんだろうとドキドキワクワクしながら
ページを繰るのが楽しかった。

角田光代の作品はほかに
「空中庭園」くらいしか読んでないので
トータルな作風を語ることはできないのだけれど、
この「八日目の蝉」だけに限って言うならば
篠田節子との共通性を強く感じた。

それは何かと言えば、
「男は常に情けない」である。
小説に登場する男たちは、
おおむね事態にうろたえ
場当たり的な対応で糊塗しようとした揚げ句
手痛いしっぺ返しを食らってしまう。

これは篠田節子の「女たちのジハード」や
「コンタクト・ゾーン」に登場する男たちにも
見受けられる性質だ。

男性としては、この扱いに怒るべきなのか?
いや、ぼく自身は大いに身につまされて
しかも反論できない共通資質を感じてしまうのだww
もちろん“デフォルメ”というフィルターを
通してみてからの感想ではあるけれど。

それともうひとつの共通点。
男を“卑屈で鬱陶しい”存在として描く一方で、
女性に対して全面応援かと思えばさにあらず。
適度な距離感をとりながら、
ときによっては冷たく突き放したりもする。

そのさじ加減も絶妙で、
結果として登場人物に厚みをもたらし、
読み手をぐいぐい引っぱっていく原動力にもなっている。

やっぱエンタメはこうでなくてはと
あらためて認識した小説だった。
とても勉強になりました。

以上、書きなぐり書評終わります(^^ゞ